「AIで何かできませんか」というご相談が、この1年で明らかに増えました。
ただ、この聞き方のまま始めると、たいてい続きません。理由ははっきりしていて、「便利になった気がする」で終わってしまい、続ける理由が残らないからです。
この記事では、AI導入の入口を「便利かどうか」ではなく「年間いくらか」で決める手順を説明します。特別な知識は要りません。必要なのは電卓と、自社の業務を思い出すことだけです。
「時間が減った」だけでは判断できない理由
AI導入の効果は、たいてい「◯時間削減できました」と語られます。けれど経営の判断材料としては、これは弱い数字です。
理由は2つあります。
ひとつは、空いた時間が何に使われたか分からないこと。1日30分空いても、その30分が別の雑務で埋まったなら、会社としては何も変わっていません。
もうひとつは、比較ができないこと。「A業務で月5時間削減」と「B業務で月3時間削減」は、Aのほうが良さそうに見えます。しかしAが社長の時間、Bがパート従業員の時間なら、金額では逆転することがあります。
だから最初に金額に直します。金額なら、他の投資判断(人を雇う、広告を出す、機械を買う)と同じ土俵で比べられます。
ステップ1:その作業に年間いくらかかっているかを出す
計算式はこれだけ
1回あたりの所要時間 × 月の回数 × 12か月 × その人の時給
時給が分からない場合は、年収を年間労働時間(おおむね2,000時間前後)で割ると概算が出ます。社長自身が手を動かしている作業なら、その時給はかなり高く見積もるべきです。
実際に計算してみる
たとえば見積書の作成。
- 1件あたり20分
- 月40件
- 担当者の時給2,000円
20分 × 40件 = 月800分 = 約13.3時間。年間で約160時間。時給2,000円なら、年間およそ32万円がこの作業にかかっている計算になります。
この数字が出ると、判断が一気に具体的になります。「32万円の作業を、いくらの投資で、どれだけ減らせるか」という問いに変わるからです。
この工程が一番大事
導入するツールを選ぶより先に、この計算をしてください。計算した結果、「思ったより小さいので、今はやらない」という結論になることもあります。それも正しい判断です。
ステップ2:「効果が金額で見える一本」から始める
計算した業務をいくつか並べると、優先順位は自然に決まります。ただし金額の大きさだけで選ぶと失敗することがあるので、次の条件も見ます。
最初の一本に向いている業務の共通点
- 毎月必ず発生する(季節業務は効果が出るまで時間がかかる)
- 手順が決まっている(人によってやり方が違う業務は、まず手順を揃えるほうが先)
- 間違えてもすぐ気づける(請求書の金額間違いは気づけますが、記録漏れは気づけません)
- 担当が1〜2人(関係者が多いほど、導入時の調整コストが跳ね上がります)
逆に、後回しでいい業務
- 年に数回しか発生しない業務
- 判断や交渉が中心の業務
- そもそも今のやり方が固まっていない業務
「一番大変な業務」から手をつけたくなりますが、大変な業務は、たいてい複雑だから大変なのです。 最初の一本は、効果が確実に出るものを選んだほうが、その後が続きます。
ステップ3:毎月、数字で確かめる
導入したら終わりではなく、決めた指標を毎月見ます。見るのは2つだけで足りることが多いです。
- 回数(自動で処理できた件数 / 人が手を入れた件数)
- 時間(実際に減った時間 → ステップ1の式で金額に戻す)
ここで大事なのは、人が手を入れた件数のほうです。 ここが減らないなら、自動化の設計が実態に合っていません。数字を見れば、直すべき場所が分かります。
3か月続けて数字が動かなければ、その施策はやめる。これを最初に決めておくと、ずるずる続く状態を避けられます。
よくある失敗
- ツールから決めてしまう:「話題のツールを入れたが、使う場面がなかった」は最も多い失敗です。業務が先、道具は後です
- 全部を一度に変えようとする:現場が混乱し、元のやり方に戻ります。1本ずつが確実です
- 効果を測る前提を作っていない:導入前の所要時間を測っていないと、後から比較できません。始める前の数字こそ、必ず記録してください
- 人の確認をゼロにしてしまう:最終確認だけは人が持つ設計にしておくと、失敗が事故になりません
まとめ
AI導入の入口は、ツール選びではなく計算です。
- その作業に年間いくらかかっているかを出す
- 毎月発生し、手順が決まっている一本から始める
- 毎月、数字で確かめる
当店では、この1番目(業務を見て金額にするところ)までを無料で承っています。効果が金額で見えないものは、こちらからご提案しません。進め方の詳細は料金セクションのAI導入・業務効率化に記載しています。
具体的な自動化の組み立て方は受注から請求までをAIで自動化する、情報の取り扱いの不安については会社やお客様の情報をAIに入れて大丈夫かもあわせてご覧ください。



